第29図 太宰府梅花宴の歌(三十二首は 815~846)
第29図 太宰府梅花宴の歌(三十二首は 815~846)
梅花の歌三十二首並に序 大伴ノ旅人
天平二年正月十三日、帥老の宅にあつまり、宴会を申べき。
時に初春の令月にして、氣淑よく風和ぎて、梅は鏡前の粉ひを披き、蘭は珮後の香りを薫しぬ。
加以、曙の嶺は雲を移し、松はうすものを掛けて蓋を傾け、夕の岫は霧を結びて、鳥は穀に封ぜられて林に迷ふ。
庭には新蝶舞ひ、空には故雁帰れり。
於是、天を蓋にし、地を座にして、膝を促けてさかづきを飛し、言を一室の裏に忘れて、衿を煙霞の外に開き、淡然として自ら放ち、快然として自ら足れり。
若し翰苑に非るよりは、何を以ちて情をのべむ。詩に、落梅の篇を紀すと、古今夫何ぞ異ならむ。宜しく、園の梅を賦して、聊か短詠を成すべしてへり。
梅の花が咲くころ、太宰府の長官 大伴ノ旅人の庭園で宴会が開かれたとき、この園の梅花を題材として32首の歌が作られた。この序が、元号「令和」の出典となった。